2015年11月8日日曜日

15.11.07 常滑

先週でお城めぐりをひと段落したので,次の目的は企業博物館めぐり.

東海地方はモノづくりの企業や工場が多いので,めぐりがいがありそうです.

今回は常滑のメーカーを巡りました.

盛田味の館
醤油やみそを手掛ける盛田の博物館
盛田味の館
内部は盛田の十五代当主 盛田昭夫氏の展示がされていました.
盛田昭夫氏は昭和21年に東京通信工業株式会社(現ソニー)を
設立し,世界中で活躍されました.

展示品は盛田氏の名刺や,勲章や賞状が飾られていました.

併設されている売店で,醤油アイスを食べたかったのですが
機械が壊れていて食べれず,残念

展示も製造工程などだとよかったのですが・・・.
少し期待外れでした.

近所には盛田家の住宅や書庫が残っています.
盛田家住宅

書庫

INAXライブミュージアム
現在のLIXILの前身,INAXのミュージアムです.
敷地内には様々な体験施設や展示施設がありました.

窯のある広場・資料館
窯のある広場・資料館
有形文化遺産に登録されている,
大正10年に建築された煙突と内部の窯が保存されています.

窯は両面焚倒焔式角窯

窯の中は休憩スペースになっていますが,
レンガ造りと暖かみのある照明でおしゃれです.

窯の側面には炭を入れる穴(焚口)が設けられています.

常滑の特産品だった土管を作る工程や機械が展示されていました.

土管づくり
1.原料から粘土を作る
 
土練機
 割れなどを防ぐために粘土を練る機械
土練機

2.成形する
 土管機
  粘土を押し込み,ガンブリ(口金)から筒状の形で押し出す.
  管が出てくる様子から「はらくだり(腹下り)」と呼ばれてるそうです.
伊奈式運搬車(奥)・土管機(手前)

口金
   口金の大きさを替えることで土管の太さを替えられる.
口金

 伊奈式運搬車
  成型後の土管を運ぶ運搬車(現在のフォークリフトに近い).
  土管は30kg近くある為,運搬車は重宝されたそう.
  「すくいぐるま(救い車)」と呼ばれているそうです.
  
3.乾燥
4.トンネル窯/倒焔式角窯で焼く.
両面焚倒焔式角窯(2Fより)

5.冷却
6.検査・出荷

土管は元々上下水道の管として生産されていましたが,
現在では別の材料に置き換わり使用されなくなってしまいました.
現在では,高速道路のトンネルに使用されているそうです.

2Fにはトイレが展示されていました.
トイレの奥深さにびっくりです.

トイレの歴史
大きな穴と踏み板の簡素なものから,樋箱(=おまる 「放(ま)る」より)で用を足すようになる.
鎌倉時代から糞尿を肥料に使うようになったため,糞・尿を分けるために便器が登場.
後部(背中側)に着物が汚れないようにするための「衣隠し」や
前部には尿が飛び散るのを防ぐ「金隠し」を立てるようになる.
江戸末期から明治にかけて耐久性が高く清潔なやきものへと変化.
江戸城本丸の御用場の樋箱
(写真奥が衣隠し)
やきものの便器
家外小便所
(四代伊奈長三)
伊奈製陶(INAXの前身)創業家の伊奈初之丞の父,
四代伊奈長三考案の外用小便所

染付古便器
 江戸末期から明治期に藍染の着物や有田焼の染付食器がブームとなり
 「青と白」の染付をしたトイレが人気を博したそうです.
小便器(朝顔形)
朝顔の開花した形に似ていることから朝顔形小便器と呼ばれています.
大便器 角形(左側)と小判型(右側)
角形の大便器は木製の樋箱を模した形状.
小判型は磁器で四角い金隠しを作ることが難しかったことから生まれたそうです.
セット便器
(同じ模様が大小便器の両方に描かれている)

ブランドトイレ
池林堂半七製 銘入り朝顔形小便器と小判型大便器
小便器下に置かれているのは「厠下駄」(小便器の立ち位置を示すもの)と
右端は「手水鉢」
紋右衛門窯 「染付花と蝶図向高(写真中央)」
紋右衛門窯は瀬戸(愛知県)を代表する窯元
明治20年頃、他が伝統的な花鳥風月を描く中,
「アール・ヌーヴォ」風デザインのやきものを出すなど最先端の意匠を意識し
「ブランド便器」を生み出したそうです.

ちなみに向高とは向こう側が高くなった形状の便器です.
二穴式便器(二つの穴で糞尿を分ける)
衛生便器 明治40年実用新案登録
(金隠しの上部に悪臭を防ぐための香入れがある)
織部焼の大小便器
織部焼いいですね!
チャンバーポットとクロース・スツール(左下)
西洋ではチャンバーポットと呼ばれるポットを使用しており,
座面に穴の開いた椅子や箱内部に置いて使用する可動式トイレ(クロス・スツール)
が使用されていたそうです.
糞尿は道や川に捨て,近郊の農家がそれを拾って肥料にしていたそうです.

ほとんどの陶製のトイレは瀬戸焼でした.
陶製トイレの最盛期,常滑は土管造りで忙しかった為,
トイレの製造はほとんどされていなかったそうです.


トンネル窯
連続焼成タイプの窯
均質な製品を量産することができるそうです.
トンネル窯
製品は台車に載せられ,1分間に数cmずつ進み
焼成されて出口から取り出されます.
入り口付近は予熱帯
入り口付近
予熱帯を抜けると焼成帯になります.
焼成帯にはバーナーが設置されており,
バーナー全体で大きな燃焼室を形成することで品質を安定させているそうです.
焼成帯は1200℃から1500℃,燃料は灯油を使用していたそうです.
バーナー
焼成帯を抜けると冷却帯に入ります.
出口付近から外気を押し込んで冷却するそうです.
台車上の製品
製品が載っているトレイをサヤと呼ぶ

建築陶器はじまり館
建物の表面を覆う薄い板状のやきもの「タイル」と
彫刻の様な大きく厚みを持ったやきもの「テラコッタ」と呼び,
この二つを建築陶器と呼びます.
明治頃から煉瓦を用いた洋風建築の時代が始まり,
大正頃からテラコッタが登場し始めたそうです.
この頃,伊奈長三が建築陶器を生産する会社「伊奈製陶株式会社」を設立しました.

タイルは現在も使用されていますが,テラコッタは大正12年頃から第二次大戦頃まで
約20年間で姿を消してしまったそうです.

スクラッチタイル(スダレ煉瓦)
引っ掻いた様な模様をつけたタイル.
鉄筋コンクリートの直線的な外見に,不均一な模様のタイルを張り合わせることで
ゆらぎの表情が加わるそうです.
スクラッチタイル
建築陶器はじまり館に隣接されたテラコッタパークがあり,
ビル解体時などに回収したテラコッタが展示されています.

テラコッタ
建物の持ち主の自由な発想や要望が形になったものが多く
独自の装飾となっています.

仮面 鬼
 邪悪なものを追い払うものの象徴.
 鬼の他に怪獣を模したものなどがあるそうです.
大日本製薬
製薬会社の為,病気(邪悪なもの)を払う意味を込めて,
鬼のテラコッタを使用したのかな.

動物 羊
雄羊は力強さや創造的なエネルギーを表す象徴
生贄の動物として大地を肥沃にするといわれています.

連続模様 アラベスク
葉や蔓・枝が複雑に絡んだイスラムの模様
横浜松坂屋本館(左)・朝日生命館(右)
(横浜松坂屋本館のテラコッタの模様がアラベスク
朝日生命館のテラコッタ下方部分が雄羊)

植物 アカンサス
力強く押し上げて伸びる様子から,
装飾模様としてヨーロッパで用いられているそうです.
朝日石綿工業(左)・大谷仏教会館(左)
(大谷仏教会館のテラコッタの中央がアカンサスの模様)

果物 葡萄
実の粒が多いことから豊穣や不滅を表しています.
ワインの原料であることから歓楽の象徴ともされています.
大同生命ビル(左)・自自庁舎(右)
(大同生命ビルのテラコッタの上部に葡萄の模様がある)

ものづくり工房
ここにもトイレが!

こんなユニークなトイレも


土・どろんこ館
企画展示で素掘りのトンネルが紹介されていました.
排水用の坑道や金銀山の坑道を作成するために
素掘りの技術が生まれ,発展したそうです.

房総半島には二五穴と呼ばれる幅2尺(約60cm),高さ5尺(約150cm)の
大きさのトンネルがあるそうです.
二五穴は土砂やごみが通水部に入り込みにくく,大雨や地震にも強いそうです.
新潟の素掘りトンネル・マブを模したトンネル

世界のタイル博物館
入るとさっそくモザイクタイルの入り口.
クレイペグによる壁空間
クレイペグ(円錐状のやきもの)で作ったモザイク模様.
なんと200万本も使用しているとか.

こちらは世界最古のタイルだそうです.
魂のための扉
青色は生命の色とされており,王の再生や復活を願って作られたものらしいです.

イスラムのタイル張りのドーム天井.幻想的です.
装飾の宇宙
住まいのタイルとしてタイル内装の部屋が展示されていました.
タイルいいですね!
①オランダ「ブルー&ホワイトのタイル」 ②ヴィクトリアン・タイル

山本コレクション
山本正之氏が「タイルのルーツを探る」研究のために,世界各国を訪れて
入手したタイルのコレクションが展示されています.

青釉タイル
イスラムなどの砂漠の民族にとって,貴重な水の色・美しい空の色から
永遠の生命や天国への憧れを表すものとされているそうです.
銅を含有することで青色をだすそうです.
青釉タイル

スペインのタイル
ラスター彩タイル(左)・白地藍彩タイル(右)
ラスター彩タイルはイスラムでも使用されていますが
金属の光沢に似た輝きをもつタイル.
銀や銅の薄い皮膜での光の反射で金属の様な光沢が生まれるそうです.

白地藍彩タイルは中国の影響を受け白地にコバルト顔料で絵付けしたタイル
スパニッシュマジョリカ
(錫釉色絵陶器の技法で作成されたタイル)
クエンカタイル
クエンカタイルはモザイクタイルの製法を簡便化したタイル.
モザイクタイルの輪郭を型で打ち出し,色釉を塗って焼成して作るそうです.


オランダのタイル
基本的には中国の影響を受けた白地に青色のタイル(白地藍彩タイル:デルフト焼)
白地マンガン彩タイル
18~19世紀に白地にマンガン紫で彩画したタイルが登場

イギリスのタイル
 銅版転写タイル
 従来の手書きの絵付けから,紙に顔料で印刷した図柄を転写する量産型の製造方法へ
銅版転写タイル

チューブライニングタイル
チューブライニングタイル
凸型の輪郭線で囲まれた凹部に色釉を塗ったタイル

 単彩/多彩レリーフタイル
①単彩レリーフタイル ②多彩レリーフタイル
金型で作成したレリーフ素地に色釉をかけて焼成したタイル.
 焼成中にレリーフの高いところから低いところへ色釉が流れることで濃淡を表現しています.
 多彩レリーフでは,色が混ざらないようにチューブランニングの手法等を用いているそうです.

日本のタイル
 瀬戸染付本業敷瓦
 白地に呉須で絵付けしたものを染付本業といいます.
 タタラ(粘土を薄く伸ばしたもの)を木枠に押し込むため
 寸法精度や平面が悪いそうです.
瀬戸染付本業敷瓦

和製ヴィクトリアンタイル(左上)・タイル絵
タイル絵は金沢の九谷焼の絵師が副業として行っていたそうです.


もともと予定には入れてなかったのですが
やはり寄らねばと思い,常滑やきもの散歩道に寄道.

常滑やきもの散歩道
案内板に沿って進むと名所を巡りながら一周できます.

常滑焼窯見学の館


食事処も兼ねていて,路地では「とこにゃんやき」が売られていました.
とこにゃんやき

巨大招き猫
町のシンボル?です.
巨大招き猫

廻船問屋瀧田家
江戸時代廻船の町だったため,廻船主の住居があったそうです.
常滑を代表する廻船主「瀧田家」の住宅です.
瀧田家

デンデン坂
瀧田家の側道はデンデン坂と呼ばれる坂道になっています.
デンデン坂

土管坂
土管や焼酎瓶が積まれています.
土管坂

登窯広場

登窯広場にも窯を見学できる施設がありました.
登窯広場展示工房館
両面焚倒焔式角窯 内部
登窯(重要有形民俗文化財)
①登窯 ②窯内部 ③焚口 ④10本の煙突
登窯の10本の煙突は両隅に行くほど高くなっています.
これは通気性を利用して窯の隅まで均一に焼けるように工夫されたものだそうです.

至る所に窯や煙突があり,やきものの町という感じがします.

想像以上にINAXライブミュージアムに時間を使ってしまった為,
本来の予定・ルートを大きく変更しましたが,常滑を堪能できました.

今回行けなかったところは,また予定を立てて行こうかな.

走行距離:106.61km
平均速度:22.4km/h
知多半島方面は以外とアップダウンが激しく,
風の影響も受けやすいので,距離の割に疲れます・・・.

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